同じ鶏むね弁当を1年続けている。──飽きなかったのは、味を工夫したからではない
作り置き弁当の記事は、だいたい「手軽」「時短」「飽きない味付けのコツ」で書かれています。私も一般論としては同じことを書きました(作り置きダイエットの始め方)。
ただ、自分が実際に1年以上続けている弁当を振り返ると、続いた理由はそのどれでもありませんでした。手軽でもないし、味も工夫していません。中身は低温調理した鶏むね肉とおにぎりだけで、1年間ほとんど変わっていません。
この記事は、その1年を数字にして書き出したものです。週に何kg買い、何時間かかり、どこで失敗したか。うまくいった話だけでは意味がないので、加熱が足りているのか分からなくなって怖くなった話も書きます。よそで読める一般論ではなく、自分の運用の記録です。
週に1回、鶏むねを2kg仕込むだけ
やっていることは単純です。週に1回、鶏むね肉を2kgほど買ってきて、低温調理器でまとめて火を通す。それを平日の弁当に200gずつ入れ、余りは夕食のたんぱく源に回す。おかずはそれだけで、あとはおにぎりです。
| 項目 | 実際の運用 |
|---|---|
| 仕込む頻度 | 週1回5日分をまとめて |
| 鶏むね肉 | 2kg前後(生)業務用サイズをそのまま |
| 味付け | 塩・胡椒のみ1年間ほぼ変えていない |
| 自分が手を動かす時間 | 30分強低温調理器の放置時間は別。その間は何もしない |
| 使い道 | 昼の弁当+夕食弁当が200g前後、残りは夕食のたんぱく源 |
肉は業務用サイズで買います。スーパーの少量パックを何個も買うより、業務スーパーやコストコのような大きい単位のほうが単価が下がるからです。買う量を「2kg」と決めてしまうと、店で悩む時間も消えます。
そして、ここが自分でも意外だったのですが、手を動かす時間は30分では収まりません。低温調理は「放り込んで放置」と言われますし、確かに加熱中は何もしませんが、その前後があります。パックを開けて水気を拭き、塩と胡椒をして袋に入れ、加熱が終わったら粗熱を取って小分けし、洗い物をする。全部で30分強はかかっています。
1年ぶんを数字にしてみる
週1回を1年続けると、こうなります。年52週として計算した概算です。
| 1年ぶん | 概算 |
|---|---|
| 仕込んだ回数 | 約52回 |
| 鶏むね肉(生の重量) | 約104kg |
| 手を動かした時間 | 約26時間 |
| この弁当を食べた回数 | 約260食 |
書き出してみて一番ひっかかったのは「約26時間」のほうでした。丸一日以上を鶏肉の仕込みに使っている計算になります。ダイエットのために毎日1時間のランニングをしろと言われたら、多くの人は無理だと答えると思います。それに比べれば年26時間は軽いのですが、ゼロではない。ここを「手軽です」と書いてしまうと、読んだ人が実際にやったときに話が違うことになります。
弁当1食の中身
弁当の中身は、鶏むね肉200gとおにぎり1個です。皮なしの鶏むね肉は食品成分表でおおよそ100gあたり105kcal・たんぱく質23g前後なので、200gでおよそ210kcal・たんぱく質46g前後。おにぎりを180kcalほどとすると、昼食は合計400kcal弱になります。
以前の昼食はコンビニ弁当や菓子パンで、700〜900kcalは食べていました(92kgのとき、外食で何を食べていたか)。カロリーが半分以下になって、たんぱく質は倍以上になっています。狙って設計したというより、肉とおにぎりしか入れなかった結果そうなりました。
お金の話(おまけ)
業務用サイズの鶏むね肉は、私が買っている範囲では100gあたり60〜80円程度です。弁当に使うぶん(週1kg前後)だけで見ると週600〜800円、年間で3〜4万円台。同じ260食をコンビニ弁当(1食500〜600円)にすると14万円前後になるので、差は年10万円近くつきます。
※ 肉の価格は店や時期で大きく動きます。ここに書いたのは私の買い物の実感で、どこでもこの単価で買えるという意味ではありません。カロリーとたんぱく質も、部位・皮の有無・調理法で変わります。
味は塩と胡椒だけ。それでも飽きなかった
作り置きの記事はほぼ必ず「飽きないように味付けを変えましょう」と書きます。カレー風味、ハーブ、麹、といった具合です。私も一般論としてはそう書きました。
ところが自分の運用では、1年間ずっと塩と胡椒だけです。カレー粉すら使っていません。それで飽きなかったのかというと、飽きませんでした。
理由を後から考えると、主役として食べていないからだと思います。味わうために開ける弁当ではなく、昼にたんぱく質を入れるために開ける弁当です。おいしいかどうかを毎回評価していないので、飽きるという判断自体が発生しません。
そして味を増やさないことには、実務的な利点もありました。味付けを4種類に増やすと、仕込みのときに「今週はどれを何袋作るか」を決める必要が出ます。袋も洗い物も増えます。選択肢を増やすほど、週1回の作業が重くなる。重くなれば、いつかサボります。
※ これは私の場合の話です。同じものを続けるのが苦痛な人は普通にいますし、その場合に無理をする理由はありません。
続いた理由は「作らないと昼に困る」から
では、なぜ1年も続いたのか。自分では答えははっきりしていて、作らないと昼ご飯に困るからです。健康意識でも、効果を実感したからでもありません。
仕込まなかった週は、昼に何も持っていない状態で会社に行くことになります。そうなれば買いに行くしかなく、それは以前の生活に戻るということです。それが分かっているので、週に一度、肉を茹でます。やる気の問題ではなく、やらなかったときに困るかどうかの問題でした。
このサイトで書いてきた自分の話は、結局そこに集まります。太っていた頃は毎日の増加が小さすぎて気づけなかった(1日30gずつ太る)。外食は選び方より、場面そのものが消えたことが効いた(外食で何を食べていたか)。そして弁当は、続ける意志ではなく、作らないと困るという既定の状態が支えていました。三つとも、意志の量の話ではありません。
| よく言われること | 実際にやってみた1年 |
|---|---|
| 飽きるから、味付けのバリエーションを用意する | 塩と胡椒だけ。1年変えていないが飽きなかった |
| 手軽だから続く | 週に30分は手を動かす。手軽ではないが続いた |
| 好きなものを選べば続く | 好きだからではなく、作らないと昼に困るから続いた |
| 低温調理は温度が低いほどしっとり仕上がる | 不安になった時点で温度を上げ、時間を伸ばした |
一度、加熱が足りているのか分からなくなった
この1年で一番まずかったのは、味でも継続でもなく、加熱の不安です。低温調理は名前のとおり低い温度で長く火を入れる方法なので、切ったときの見た目が、しっかり焼いた鶏肉とは違います。中心が白くなりきっていないように見えて、これは本当に食べていいのかと分からなくなりました。
調べると、厚生労働省が家庭向けに出している目安ははっきりしています。食中毒を防ぐ加熱の条件は「中心部の温度が75℃で1分間以上」。冷蔵庫は10℃以下に保つこと、菌は室温でも短時間で増えること(O157は室温で15〜20分で2倍に増える、と書かれています)も併記されています。
低温調理の世界では、これより低い温度でも十分な時間を保てば同等の効果が得られる、という考え方が使われます。ただしそれは温度と時間の両方が正確に管理できていることが前提の話で、肉の厚みや量、器具の性能で条件は変わります。素人が「もう少し低いほうがしっとりするから」と自己流で下げていい場所ではありません。
私がやったのは単純で、温度を上げ、時間を伸ばしました。仕上がりのしっとり感は多少落ちます。それでも、昼に食べるものに不安を残すよりはましだと判断しました。今も設定はそのままです。
低温調理をやるなら、ここは守る
- 加熱の温度と時間は、使っている器具のメーカーが公開している条件に従う
- しっとりさせたいからという理由で、自分の判断で温度を下げない
- 加熱が終わったら早く冷やし、冷蔵庫(10℃以下)で保存して早めに食べ切る
- 少しでも不安が残るなら、切ってから火を通し直す
※ 体調に不安のある方、妊娠中の方、小さな子ども・高齢者が食べる場合は、低温調理ではなく通常の加熱を選んでください。
この運用の弱いところ
1年続いたと書きましたが、この弁当を人に勧められるかというと、そのままでは勧められません。弱点がはっきりしています。
- 野菜がゼロ。鶏肉とおにぎりだけなので、食物繊維もビタミンも入っていません。昼だけを見れば明らかに偏った内容で、朝と夜で補う前提の弁当です。カット野菜やミニトマトを足すだけでもだいぶ違います。
- 脂質が少なすぎる。皮なしの鶏むね肉ばかり食べていると、脂質が不足しがちです。脂質は減らせば減らすほどいいものではありません。
- たんぱく質は多めになる。昼だけで46g前後、夕食のぶんも合わせるとかなりの量です。厚生労働省の食事摂取基準が示す推奨量(成人男性65g/女性50g・1日あたり)から見れば多い部類なので、腎機能などに不安がある方は自己判断で真似せず、医師に相談してください(たんぱく質の必要量)。
- 仕込めない週は普通にある。予定が入れば仕込む時間は取れません。1年続いたというのは、1度も欠けなかったという意味ではなく、抜けた週は外で買うだけです。抜けた週に自分を責めない前提でやらないと、1回の失敗でやめることになります。
同じことを試すなら
同じ形を試すなら、私がやってしまった遠回りは省けます。始めるならこの順番を勧めます。
- 週5日を目標にしない。まず週2日から。5日ぶん作ると、失敗したときの損失も5日ぶんになります。
- 味付けを増やさない。最初から複数の味を作ると、仕込みが重くなって続きません。飽きてから考えれば間に合います。
- 買う量を先に決める。「2kg」のように固定してしまうと、店で悩む時間と、余らせる不安が消えます。
- 加熱条件は公式の数値をそのまま使う。ここだけは自己流にしない。しっとり感より安全を優先してください。
- 作らないと困る状態にする。私の場合は「弁当がなければ昼に買いに行くしかない」という当たり前の状況が、そのまま続ける力になりました。意志で続けようとすると、忙しい週に負けます。
なお、1日に必要なカロリーやたんぱく質の目安が分からないまま量を決めると、多すぎたり少なすぎたりします。自分の数字を先に出しておくと、弁当に何をどれだけ入れればいいかが決まります(1日に必要なカロリーの計算方法)。
まとめ
- 低温調理した鶏むね肉とおにぎりだけの弁当を1年以上続けている。週1回・生2kgを仕込み、年にすると肉104kg・作業26時間ほど
- 味付けは1年間ずっと塩と胡椒だけ。それでも飽きなかったのは、主役として味わっていないから
- 続いた理由は手軽さでも好みでもなく、作らないと昼に困るという状態にしたから
- 低温調理は加熱条件がすべて。不安になった時点で温度を上げ時間を伸ばした。厚生労働省の目安は中心部75℃で1分間以上
- 野菜ゼロ・脂質不足という弱点があるので、そのまま真似せず足すものを足してほしい
1年続けて分かったのは、続く仕組みは好きになることではなく、やめたときに困る形にすることだという一点でした。手軽さを売りにした方法ほど、忙しい週に簡単に飛ばせてしまいます。
参考・出典
- 家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(厚生労働省)
- たんぱく質(厚生労働省 健康づくりサポートネット(e-ヘルスネット))
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)
この記事を書いた人
motsuサクメシ運営 / フィジーク大会入賞会社員をしながら筋トレとダイエットを10年以上続け、フィジーク大会で入賞。90kg台からの減量を経験しています。自分の食事記録と失敗の積み重ねをもとに、続けられる食事管理の方法を発信しています。
プロフィールを見る →本記事は健康的な食生活に関する一般的な情報提供を目的としたもので、医師による診断・治療・処方に代わるものではありません。持病のある方、妊娠中・授乳中の方、通院・服薬中の方は、食事内容を変更する前に主治医または管理栄養士にご相談ください。
無料・登録不要。質問に答えるだけで7日分の食事プランが完成します。
あわせて読みたい
もっと詳しく知りたい方はこちら(note)